Tは自殺の瞬間だけでなくて、それまでの身の回りの日常なんかについてもテープを回していて、なんだか笑える。N山も言ってたけど、一番美しいのは、彼女やセフレや自分に気がある女とかじゃなくて、片想いしてる女と一緒に夜の公園でテープを回してる場面だ。
その女のスニーカーのアップからその場面は始まる。
「あ、買ったんだー、遂に」
その女はTが自殺を撮るために買ったのだというビデオカメラに興味津々で、Tからカメラを受け取って周囲の光景を写し始める。
「凄い、結構写りいいじゃん。あ、人の目より明るく写るんだね」
「あ、その、モード切り替えで」
「あれ、何この赤い小さい枠線」
「これ、実は凄い嫌な機能があって。なにか、自動的に人の顔を認識して、赤い枠がそれを捉えて」
「へぇ」
「それで、笑顔を認識すると、勝手に写真モードになってSDカードに静止画ファイルを保存するっていう」
「あはははは! 何それ」
「物凄いおせっかいな機能でしょう!」
「それ滅茶余計なお世話だね。それ超面白い。超ウケるよ。むやみに笑顔の写真がたくさん詰まってるんだ。それ、凄い面白いねー」
Tはサンポール混ぜるときなんかでも照れ笑いしながらなんてこともなく死んでいったから、そういう死ぬときの笑顔とかまで写真として保存されていたんだとしたら…なんて考えると、不幸な生い立ちとかトラウマとか全部関係なくてそれはやっぱりちょっとウケるかなぁとか思った。
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